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家庭用電気オーブンでバゲット(バタール)焼きに挑戦

リーン系パンとは

食パンや菓子パン等、砂糖とバターを混入するパンを「リッチ系パン」と呼びます。
「リーン系パン」は、小麦、水、塩、酵母、モルト(パウダー/シロップ)のみで焼くハードパンのことです。
リッチ系パンとは異なり、家庭用電気オーブンでこのハードパンを焼くには、かなりの工夫が必要でした。

業務用オーブンと、家庭用電気オーブンの違い

業務用オーブンは上火・下火・加湿を随時調整出来る

業務用オーブンは上火温度、下火温度、加湿ボタンがあり、これらを自動制御出来るものもあります。毎日大量のパンを一気に焼くわけですから、とても巨大で高価です。生地をセットすると、後はほぼ自動で加湿焼成できます。温度も320℃以上に設定できます。無敵ですね。

家庭用ガスオーブンは、業務用オーブンに近い操作が可能

家庭用でも、ガスオーブンはパン焼きやオーブン調理に特化しているため、上火・下火の調整が出来るものがあります。加湿ボタンまであるものは余り見かけませんが、ガスは下から加熱する構造になっているので、自然と「下火を強く、上火を弱く」調整しやすいのです。

家庭用電気オーブンレンジはデメリットだらけ

一般的な家庭用電気オーブンレンジは、ヒータで加熱した温風を、オーブンの背面中央のファンでオーブン内に吹き付ける仕組みになっており、オーブン内温度は一定なのですが、下火よりも上火が強めになってしまいます。上火と下火の調整は出来ず、全体の温度を指定することしか出来ません。この構造では、バゲットは膨らまないのです。設定できる最高温度も250℃までしかありません。

ただし、東芝の石窯オーブンは、ハードパンを焼くために、下火を強める構造、短時間ですが、320℃以上の焼成が可能です。もしハードパンを焼くためにオーブンをこれから買う方は、ガスオーブンか、東芝石窯オーブンがお勧めですね。(高いけど)

最高温度250℃のSHARP製の安物オーブンレンジの改良

ちなみに僕は自分でバゲットを焼くなんて想像すらしておらず、ネットで一般的な電気オーブンレンジを買ってました。食パンを焼いて、急に「バゲット焼きたい」と思い立ってから何度チャレンジしてもうまく行かず。YouTubeで動画を見ても、全然上手く焼けず。
プロのパン職人の方に、「俺も家庭用電気オーブンでバゲットを焼く自信は無いよ」と言われ、このままでは無理だと悟りました。

5mm厚のC1100銅板の導入

下火の温度を維持する為に、5mm厚のC1100銅板を導入しました。(基本の食パンでも紹介してます。)
下記サイト(非鉄金属.com)で発注しました。3万円弱かかりました。2.7kgと大変重たいです。
縦と横の長さは天板の内側サイズより5mm短めとし、コーナーR加工はR30mm以上を指定してください。

非鉄金属.comへ

5mm厚のC1100銅板
銅板2

「熱風よけ」を作成

家庭用電気オーブンレンジの中央から出る熱風を生地に当てない為に、DIYショップで0.5mm厚の銅板を購入し、下記のような風よけを作りました。
熱で変形したり、風で倒れたりしなければ、アルミ板でも良いと思います。

風よけ

オーブン温度計の導入

TANITAのオーブン温度計も導入しました。実際に測定すると、予熱完了後は、全然設定温度に達していないことがわかりました。
オーブンの設定温度は、全くあてになりません。

予熱前には風よけを入れず、タルトストーンを750g入れたトレイ(ロウリュ式加湿用)も一緒に予熱します。
予熱温度は、TANITAオーブン温度計で確認します。
250℃で予熱完了後、完全に250℃まで庫内温度が上がるのに20〜30分かかります。

予熱前のシステム

250℃に達したら、風よけをセットして、再度250℃で予熱します。

予熱完了後に風よけセット

このようにオーブンを改造することで、失敗なくバゲットが焼けるオーブンになりました。

バゲットのレシピ

僕のバゲットはお手軽バゲットではなく、完全にプロ仕様です。味も見た目も保証しますが、とても手が込んでます。

必要な機材

  • 加湿に耐えられるオーブン(オーブンの加湿機能は使いませんが、加湿可能オーブンでないと故障します。)
  • 天板1枚(5mm厚の銅板を仕込む)、風よけ(自作)
  • TANITAの0.1g単位で測れるデジタル秤
  • 微量計量秤(0.001g単位で50gまで測れるもの。Amazonで2500円位で売ってます。)
  • オーブン温度計 TANITA製がオススメ
  • 大きなタッパー2〜3個 (1つは生地を寝かせる。2つはベンチタイムで被せる用)
  • ボウル1つ(生地を作る時に使用。タッパーでもOK)
  • キャンバス布地(大きめが良い)、パン捏ね台またはシート(キャンバス布地2つでもOK)
  • 注ぎ口が細長いヤカン(熱湯をトレイに注ぐ時に必要)
  • タルトストーン750gと、ステンレス製トレイ(ロウリュ用)
  • 粉こし器(使いやすいものを)
  • 刷毛(木工用のハケで良い)
  • 金属製の大さじ(硬いもの。計量スプーンは柔らかすぎる)
  • シャワーキャップ(ラップでも良いが、シャワーキャップが断然使いやすい)
  • クープナイフ (カミソリ刃で、先を三角にカットする。 オリーブオイルを塗って使います。)
  • ストッキングを被せた板(バゲットを移動させる時に使う)10 x 50cmくらい。厚紙等で作れる
  • (キッチンが狭い場合)桐板や合板(シンクの上に被せて、作業スペースを確保する)
  • (気温が20℃を超える日に必要)小型ワインセラー (17℃が最適)

材料(バタール2本分)

  • リスドォル(準強力粉) 250g (好みの強力粉8に、薄力粉2の割合で混ぜてもOK)
  • 海塩 4.5 - 5.0g (岩塩よりも海塩のほうが旨味のある優しい味になります。お好みで。)
  • モルトシロップ 1.0 - 2.0g (モルトシロップが多いと、焼き色が強く付きます。モルトパウダーでも良い。)
  • ドライイースト(赤サフ) 0.1g
  • 冷やした硬水(Ebian等) 175 - 180g  少なめの水でミキシングし、後で加水(パシナージュ)する方と良い
  • 打ち粉 (強力粉)結構使います。100gぐらいは使う。
  • (クープ入れる前に振りかける)ライ麦全粒粉 少々 (無ければ強力粉でもOK)
  • (加湿焼成用)熱湯100mL
  • (クープナイフ用)オリーブオイルかバター 少々

手順その1(1日め 一次発酵まで) 

材料の計量

材料の計量は、TANITAの0.1g単位で測れる秤を使って、出来るだけ正確に測りましょう。

まずは、リスドォル250gをボウルかタッパーに入れ計量します。そこに0.1g以下のイーストを計量し、混ぜ込みます。
イーストは0.1g以下にする必要があります。微量計量用の秤が必須です。下記のものはAmazonで2500円以下で買えました。

微量測定秤

次に下記のようにお椀を準備し、モルトシロップ(モルトパウダー)を計量します。
シロップは慣れるまでが大変なので、モルトパウダーがおすすめです。

モルト計量

次に海塩と、冷蔵庫で冷やしておいた硬水を分量どおり注ぎ、綺麗に溶かします。(モルトシロップは、なかなか溶けない)
塩、水を測定する前に、必ず秤を0.1gモードとし、0にリセットするのを忘れないようにしましょう。

Ebian

ミキシング

小麦粉とイーストを入れたボウル(またはタッパー)に、モルトと塩を溶かした水を3回位に分けていれ、粉気が無くなるまで、よく混ぜます。
混ぜる時に金属製の大さじが便利です。(この次のパンチ作業でもスプーンが活躍します。)
生地に手を触れないよう注意してください。(17℃で一次発酵させるので、雑菌が入ると腐ります)

ミキシング

17℃でオートリーズ (気温15-20℃なら、室温でOK)

ボウルにシャワーキャップを被せて(タッパーなら蓋をして)17℃ぐらいの環境で30〜60分寝かせます。これをオートリーズといいます。捏ね作業をしなくても、自然にグルテンが出てきます。テレビ番組でも見ながら待ちましょう。時間は適当でOK。

オートリーズ

捻じりパンチ(4回)

下記手順で捻じりパンチを20分毎に4回行います。捻ったり、スプーンで伸ばしたりして、生地が固くなったら20分寝かせる感じです。
ここではグルテンを育てるのが主目的です。決して手荒に扱わず、グルテンをゆっくり伸ばすよう意識して丁寧に扱いましょう。

まずは大さじで生地を持ち上げます。

捻じりパンチ1

次に、ボウルをくるくる回して生地を捻じります。この時に生地がちぎれないよう気をつけましょう。

捻じりパンチ2

捻った状態で、生地をスプーンからおろします。これを数回繰り返します。生地が引き締まってきたら1回のパンチが終了です。

捻じりパンチ3

20分毎に、4回程捻じりパンチをすると、かなりグルテンが出てきて生地がなめらかになります。

17℃程度の環境(ワインセラーおすすめ)で、膨倍率2〜2.2倍になるまで、一次発酵させます。(概ね18時間です。)

オーバーナイト製法とも呼ばれますが、ワインセラー等で一晩寝かせます。時間よりも膨倍率が重要です。(気温15-20℃なら、室温でもOK)
下の写真は、4回の捻じりパンチが終了した直後です。

一次発酵前

手順その2(2日め 生地の分割、成形、二次発酵、焼成まで)

まずは室温(24℃以下)に生地をおき、膨倍率を満たす

ワインセラーから24℃程度の室温に置き、目標となる膨倍率2 - 2.2になるまで待ちます。下記の写真ような状態になったら成功です。

一次発酵終了

【重要】オーブンの予熱の開始

オーブンに天板とロウリュ用のタルトストーンをセットし、予熱を開始します。(風よけは入れない)
オーブン温度計も忘れずに!オーブンの表示する温度は全く当てになりません。 風よけは250℃に達してから入れ、再び予熱します。

予熱前のシステム

僕のキッチンはとても狭いので、シンクの上に桐板を2枚セットし、その上にキャンバス布地をかけてます。キャンバス布地には打ち粉をしっかりします。右端にはパンこねシートを準備し、最初にここで生地を分割しています。(各自、やりやすい方法で)

パンこね作業台

まずは、パンこねシートに、しっかり打ち粉します。次にタッパーの生地の上に、打ち粉します。
カードを使って、生地をタッパーの壁から剥がします。(壁から剥がすだけです)

パン捏ねシートの上半分に、タッパーをひっくり返して置きます。自然落下を待ちます。(下半分は、空けておく)

生地をとりだす

生地の分割と最終パンチ

生地を上下に2分割し、最終パンチを行います。まずはした半分を可能な限り薄く広く広げます。(破らないように注意)

生地の分割

まずは左右3つ折りにします。余分な粉はハケで払ってください。

最終パンチ2
最終パンチ3

左右を折り込んで、上の写真の状態にしたら、余分な粉を払いつつ、下から上に、3分の1ずつ巻きます。
そして打ち粉をたっぷりしたキャンバス布地に移します。

最終パンチ4

分割した生地を2つとも、左右三つ折り、上下三つ折り巻きしたら、タッパーを被せて、15分のベンチタイムをとります。

ベンチタイム

成形作業

ここがキモです。こればかりは何度も繰り返しチャレンジして慣れるしかありません。
まずは生地に軽く打ち粉をします。ほんの少しでOK

成形作業1

次に、手のひらで軽くトントンします。打ち粉を叩くくらいの軽さで。

成形作業2

次に、上3分の1、下3分の1を折込み、長方形にします。

成形作業4
成形作業5

ここからが難しい。生地の表面を張らせるように、左から右に、生地の上を右手で摘んで巻き、左手で押さえます。
僕は指先を使い、クッと押してます。(多くのYouTube動画では、右手で巻いて、左の掌の元で押すように指導してます。僕はそれが出来ない。)

成形作業6

この「右手指で巻いて、左手で生地を押さえる」作業を3回ぐらい繰り返し、少しずつ生地を細長く、表面をピンと張ります。

(これは僕の独特の手法なのですが、最後は、右手の人差し指で生地を押さえ、左手で摘んで生地を閉じていきます。)

成形作業8

最終的に、下記の写真のような、かなり細長い形にします。(オーブンに入る長さ)

成形作業b

成形が完了したら、軽く生地を転がし打粉をまぶします。
ここでグイグイ押して転がすとダメです。生地の表面が弛みます。

キャンバス布地で挟んで、打粉をして、二次発酵させます。膨倍率1.3倍以内にします。(気温によりますが、10〜20分)

成形作業a

二次発酵

二次発酵前に、ライ麦全粒粉をかけてます。この段階でかけた方が、生地への粉の乗りが良いので。

二次発酵

二次発酵が終わったら、まずは熱湯を沸かしましょう。100mLです。(加湿焼成の準備)

ピザボードの上に、オーブンペーパーを敷きます。オーブン天板のサイズにします。
不要な部分(写真の下の折っている部分)は切り取りましょう。(切らないと、オーブンに入れた時に、とても邪魔になります。)

ピザボード

ストッキングを被せた板等を使って、キャンバス布地から、オーブンペーパーに生地を移します。
(とても柔らかいので手では持てないです。板の上に転がす感じで移します。)
生地の綴目が下になり、綺麗な面が上になるように。

クープ入れから加湿焼成まで

クープを入れる段階で、加湿用のお湯100MLが沸騰し、オーブンは250℃になっていないといけません。

小皿にオリーブオイルかバターを入れ、クープナイフにつけながらクープを入れてます。

クープ入れ前

クープは下の図のように、3分の1ずつ重なるように入れます。

クープ

僕の場合は、最初はクープナイフを真っ直ぐしたまま深くクープを入れ、
2回め以降は「皮を剥ぐようなイメージ」で、切ったクープにクープナイフを斜めに倒して深く刃をいれます。
上手く切れないときは、オリーブオイルを付けて、複数回切ってます。
(僕は、2~3度、刃を入れないと、上手く切れないです。まだまだ修行が足りません。)

慣れてきたら、最初から一発で斜めに刃を入れてもOKです。
キチンと表面を張る成形できていたら、クープを入れた直後からクープが開きます。

クープ入れ後

加湿焼成

クープが入ったら、すぐにオーブンに生地を入れます。火傷しないように気をつけましょう。生地を入れたら直ちに熱湯をロウリュ用のタルトストーンに注ぎ、扉を閉じます。オーブンの予熱が下がらないよう、可能な限り短時間で作業します。

250℃で10分程度焼きます。下の写真のように、生地がぷ〜っと膨らんできたら、ほぼ成功です!

焼き色1

生地が膨らみクープが開いたら、温度を230℃にして16-18分焼きます。(トータルで26〜28分焼きます。)
焼成時間は、生地の焼き色を見ながら、好みの色になるまで焼きましょう。

焼き上がり1
完成バタール

この写真のように、クープのエッジが立ち、クラム(内部)がボコボコになっているのが、素晴らしいバゲットです。

焼き上がり2

バゲットの保存について

バゲットはクールダウンしたら、好みの厚さにカットし、zipロック等の冷凍用袋に入れて冷凍しましょう。
食べるときは、ガーリックバター等を凍った状態で載せ、3分程オーブントースターで焼いたらok
10日ぐらいは楽しめます。それ以上は冷凍焼けして白く変色してしまいます。

冷凍保管

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